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2007.08.06  [金子一馬]  金子一馬のマルカジリ日記 Vol.11
前回の「林間学校」話で、金子が子供のころは「心霊」とかの情報はTVの
”その手”の番組か本くらいしか無かったとお話しましたが、今ではネットをはじめ
様々な情報ソースがあって、金子としてはしみじみ「いい世の中になったなあ」と
思うのですが、じゃあ情報が多ければそれでいいのかと言えば、そうでも無いの
かもしれません。
何しろその情報に踊らされちゃう人もいるんですから、特に適正な判断をする為
の経験が乏しい子供だとなおさらですよね。
今回はそんな感じのお話。

ちょっと前の話だが民放のゴールデン枠で”学級崩壊”をテーマにした特番を
やっていた。その番組の中で小学4〜6年生くらいの子供を集めて”学級崩壊”に
ついて座談会をするコーナーがあったのだが、やがて話題は”いじめ”や”自殺”
といったよりショッキングな内容に進んで行くんだけど(番組制作側が煽っている
んだけどね)、その中の子供が面白い事を言い出した。
「死んでもゾンビになって生き返るよ。それはねー、ゾンビパウダーというのが
あってねー、それを使うと生き返るんだよ…」
なんと「ゾンビ」についてのウンチクを語り始めたのだ。
まさか民放のゴールデン枠で「ゾンビ」について聞く事が出来るとは思わなかった、
しかも真面目なテーマの番組で。
思わず「オレの子供の時みたいじゃん!」と共感しそうになったのだが、「ちょっと
待て!この子供、間違ってるじゃん」という事に気付いたのだ。
これも昨今の情報の氾濫のせいだろうか、実はこの子供、「ゾンビパウダー」とか
のディテールはやたら詳しいが、肝心の「ゾンビ」について勘違いしてるのだ。

映画やゲームの影響か、「ゾンビ」というのは死んだ人間が蘇って徘徊するものと
思われているが、実は「ゾンビ」は西アフリカやハイチに伝わるブードゥー教の
刑罰の事なのである。
簡単に説明すると、まずブードゥーの戒律や人々の間のルールを破った人がいる
とする。
この人にブードゥーの神官が「ゾンビパウダー」(フグ毒のテトロドトキシン が
主原料とされるが、定かでは無い)を本人に気付かれないように服用させる。
すると、この人は「ゾンビパウダー」の毒成分の影響で仮死状態になってしまい
その人の家族はその人が死んでしまったと勘違いして葬儀、埋葬をしてしまう。
埋葬後、ブードゥーの神官がその人が埋葬された墓に現れ、家族に気付かれない
ようにその人を墓から掘り起こして覚醒させるが「ゾンビパウダー」の毒成分の
影響で幻惑状態が続いているので、その人は覚醒したと言っても自分の意思の
無い人形のような状態になってしまっているのだ。
この状態こそ「ゾンビ」と言うのだが、この後ブードゥーの神官はこの「ゾンビ」を
操って畑仕事などの労働をさせるのだが、ハイチの人たちは自分でも気付かない
内に「ゾンビ」にされ本人の意思とは関係なく労働に従事させられる事を恐れて、
戒律やルールを守るようになるという訳である。
つまり「ゾンビ」とはハイチの人たちにとって刑罰であり戒めでもあるんですね。
ちなみに「ゾンビ」にされ労働に従事している時の食料は「ゾンビキュウリ」という
ものらしいが、どんなキュウリかは不明である。おそらく幻惑状態を維持させ
「ゾンビ」状態が続くように「ゾンビパウダー」の成分を混ぜたものと思われる。
また最近では仮死状態から埋葬、それを掘り起こすというプロセスを省略して
「ゾンビパウダー」を服用させたらすぐに幻惑作用が起きて、即「ゾンビ」化する
という説もある。
実際にこの「ゾンビ」にされたが突然、意識が戻り(刑期が終了したという事か?)
家族の元に返ってきた人の話などもあって、まことしやかに語られている
「ゾンビ」だが実際は人々に戒律やルールを守らせる為に創作された話というの
が事実のようだ。

という訳で「ゾンビ」というのは死者が蘇ったものではなく、自分の意思を無くして
何者かに操られている状態を「ゾンビ」というのだが、そもそもこの子供が
間違えているのは死者に「ゾンビパウダー」を使うと言っているが、例えば
飲ませるにしても死者は死んでるのだから飲み込めないし、仮に無理に突っ込ん
だとしても代謝機能が停止しているので体内でその成分を吸収することは
出来ない。単にふりかけるとしても皮膚の代謝機能が停止しているので同じ事だ。
そして何より間違っているのは「ゾンビ」になって生き返っても、それは「ゾンビ」
というモンスターになったという事で死んでしまったその人じゃないじゃんか。

まあ子供が言ってる事なので、そんな目くじらを立てて揚げ足をとる事でもないの
だが、問題なのはこの子供が番組の中でどういうつもりで「ゾンビ」の話をした
のか?である。
想像するに、本気で「ゾンビ」とは人が死んでも生き返ることが出来る都合のいい
ものだと思っているか、人が死んでも生き返らない事は解っているが話の流れで
こんな話もあるぜ的に「ゾンビ」のウンチクを披露したか、あとは番組制作側に
言わされたかのどれかであるが、正直なところどれが正しいか解らない。
ただ番組のテーマが”学級崩壊”、座談会のテーマが”いじめ”や”自殺”つまり
番組的には”最近、子供がおかしくなってきている”事がテーマなので、
結果としてこの子供の「ゾンビ」についてのウンチクは、番組のテーマに合わせて
上手く使われちゃっている事になるのだ。
おそらくこの番組を見ている”学級崩壊”について気になっている大多数の大人
には、この子供が在りもしない事を本気で信じちゃってる子供に見えただろう。
結果として「ゾンビ」とともに関連する映画やゲームも子供にとって有害なものと
思われてしまう事がとても残念である。

子供というのは、よりインパクトが強いとかショッキングな内容の情報に目がいく
ものだ、その上に適切な判断をする為の経験も乏しいから間違った情報を信じて
しまうのも仕方なかろう。
もし子供が「ゾンビ」について間違った認識を持っているなら、正しい認識を
持っている人が教えてやればいいことだし、それは「ゾンビ」に関わらず何でも
そうだと思う。
単純に適切な判断が出来るように経験を積ませてやればいいだけだ。
しかし結局のところ、それをしなければいけない大人たちがよりインパクトが強い
とかショッキングな内容の情報に目がいってしまいがちなので、正しい認識や
判断力を子供に伝える事ができるのか疑問ではある。
何時の時代でも自分が楽しむ為に間違った情報を流したり、自分に都合がいい
ように情報の操作をする輩がいるものだ。
年齢の大小に関わらず、そんな輩が流す情報に踊らされないように、正しい
判断が出来るようしておきたいものである。
何せ自分で判断出来ずに情報に踊らされているさまは「ゾンビ」のようであると
言えるからね。

ところでこの子供の「ゾンビ」についてのウンチクの後、座談会はどうなったかと
言うと、そのまま”死”について話合われるのかと思ったら「ゾンビ」については
完全にスルーされ座談会はそのまま終了してしまった。
せっかく「ゾンビ」についてウンチクを披露したのにちょっとかわいそうだが、
民放のゴールデン枠の真面目な番組には「ゾンビ」は破壊力がありすぎたの
かも。
[金子一馬]
◆「女神転生」シリーズに登場するキャラクターや悪魔のデザインを手掛けており、「悪魔絵師(電脳悪魔絵師)」の別名を持つ。
「デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団」原案・アートディレクション
「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王」プロデューサー・キャラクターデザイン

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