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2007.08.20  [金子一馬]  金子一馬のマルカジリ日記 Vol.13
前回はゾンビと言えばという事でジョージ・A・ロメロ作品とその関連作品を紹介
したが、今回はコメディタッチのゾンビ映画、「バタリアンシリーズ」を紹介しよう。


・「バタリアン」
 (1985年 原題=RETURN OF THE LIVING DEAD)
 監督はダン・オバノン、物語はとある田舎町の医療倉庫で働くオッサンとバイト
 の学生くんの会話から始まる。
 オッサン曰く「映画のナイト・オブ・ザ・リビングデッドってあるだろ、あれ実話
 なんだぜ。その証拠にこの倉庫には陸軍が生物兵器実験で蘇生したゾンビを
 封印したタンクがあるんだ」てなワケで二人はそのタンクを見に行くが、突然
 タンクが破裂してゾンビが出てきてしまう…。
 こんな感じで始まる本作は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を徹底的に
 パロディ化した作品なのだが、単なるパロディ作品かと思いきや実は立派な
 続編なんですね。
 とは言ってもロメロの「ゾンビ」に繋がる続編ではなく別の流れの続編で
 どうやらプロデューサーが「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」の脚本家から
 続編の映画化権を買った事でそうなったらしい(なんでロメロ的にはあんまり
 面白く無いみたい)。
 まあ理由はどうあれ、さすがに本家(の続編)にはかなわないので、せめて
 ゾンビだけでも上回るものにしようと考えたかどうかは知らないが、この作品に
 登場するゾンビは映画史上、類を見ない程の最強のゾンビとなっている。
 何しろ頭部を破壊されても死なないし、体をバラバラにされても死なない。例え
 指先一本でも生きているという不死身さ(死んでるのに不死身というのも変だ
 けど)を持ち、さらには救急車を襲い救急隊員を餌食とした後、無線を使って
 さらなる餌食として救急隊員の応援を要請するなどの思考能力を持ち、道具も
 使えるし、言葉も喋れるという従来のゾンビセオリーがまったく通じないゾンビ
 なのだ。
 そして最も厄介なのがその感染能力の高さ。従来のゾンビはゾンビに噛み
 付かれるとその人もゾンビになったが、「バタリアン」の場合は体をバラバラに
 しても死なないので、それならばと焼却するとその煙が上空に上り雲になって
 雨が降ると、その雨に触れた死体も新たなゾンビになってしまうという、恐るべ
 き感染能力を持つ。まさに始末のしようが無いゾンビなのだ。
 彼らが人間を襲う理由はただ一つで、ゾンビになると常に体中に激痛が走って
 いるらしくその痛みを癒す唯一の方法が人間の脳を喰う事らしい。
 
 そんなワケで「バタリアン」に登場するゾンビはかなり厄介な存在だが、基本的
 にはコメディ作品なので、全身がドロドロに溶けた”タールマン”や、やたらと
 減らず口をたたく上半身だけのゾンビ”オバンバ”などキャラクター性の高い
 ゾンビが登場するのも特徴の一つとなっている。
 そんなゾンビ達が「ギブミーブレイン…」とか言いながらにじり寄って来るサマは
 恐ろしいやら可愛いやらで、全体的に笑える作品となっているんだね。
 しかし、そんなバカバカしい内容の作品だからといっても考えさせられる所が
 無いワケでも無い。
 冒頭のオッサンとバイトの学生くんはゾンビを封印していたタンクから噴出した
 ガスを吸った事で結局ゾンビになってしまうのだが、物語後半に学生くんの
 彼女も登場して全身が痛いと言う学生くんを介抱するのだが、学生くんは
 「やっと痛みから解放される手段が解ったよ…それは脳を喰う事ダー!」という
 感じで彼女に襲い掛かるが、当然彼女は逃げる。そこで学生くんは「俺の事、
 愛してないのか?愛してるのなら脳クレー!」とさらに襲い掛かる。
 安っぽいドラマの口先だけの愛よりも、よっぽど愛が試される瞬間ですよね。
 あなただったら最愛の彼女(彼氏)がゾンビになったら脳をあげますか?、
 「メガテン」ならばロウかカオスのどちらかに属性が大きく傾くところです。
 ゾンビなんていう非日常的なものでなく現実の似たような状況と照らし合わせ
 て考えると解りやすい、例えば最愛の人がやたらとコストのかかる不治の病
 だったとしたら…とか。
 金子だったらもちろん脳はあげずに楽にしてあげますけどね(まあバタリアン
 は死なないので楽にさせようが無いけど)。
 
 まあ一見バカバカしい作品でも観ようによっては、こんな重厚なテーマが導き
 出せるって事の好例といえますね。
 ちなみに「バタリアン2」という正統な続編があるが、登場する役者がほとんど
 同じ上にやってる事もほとんど同じなので、続編というよりはパラレルワールド
 で同じような事が起きましたみたいな感じの作品である。
 唯一面白いのは、例の二人(オッサンとバイトの学生くん)がまた例によって
 ゾンビになっちゃうのだがオッサン曰く「何か前にもこんな事があったような…」
 と、セルフパロディをネタにした台詞くらい。
 なんであえて観る必要は無いです。

・「バタリアンリターンズ」
 (1993年 原題=RETURN OF THE LIVING DEAD 3)
 「バタリアン」シリーズの3作目、監督はブライアン・ユズナ。
 「バタリアン」のゾンビは軍が開発した”トライオキシン245”という薬品(一作目
 でタンクから噴出したガスもコレ)によって蘇生した死体が元になって
 いるが、どうやら強い麻薬作用によって死体が蘇生するらしい。
 で、今回はその薬品を開発している軍人を父に持つ男の子が主人公。
 ある日、彼は父親からIDカードを盗み出し彼女を連れて研究所に忍び込んだ。
 もくろみとしては彼女と一緒に動物実験を見物するつもりだったが、そこで
 始まったのは例の薬品を使った死体蘇生実験だった。
 驚いて逃げる二人だがその夜、主人公の男の子と彼女がバイクに乗っている
 と、そのバイクが事故ってしまい彼女が即死してしまう。
 あわてる主人公だが例の研究施設での蘇生実験を思い出し、再び研究施設に
 忍び込んで例のガスを使って彼女を蘇生させるが…。
 という感じではじまる本作、何となく展開は読めると思うがゾンビとなって
 しまった 彼女を連れての逃避劇である。
 「バタリアン」の続編なので、またバカバカしいコメディ路線かと思いきや、
 ゾンビになってしまった彼女の飢えと痛みを癒すために行く先々で助けてくれる
 心優しい人たちを次々と手にかけなければならない(ゾンビの彼女に脳を
 食べさせる)というドロ沼展開で、しかもこの先どうしていいのか解らないという
 悲劇的 ラブストーリーとなっている。

 この物語で主人公の男の子は彼女を死なせるという過ちを犯すが、手っ取り
 早くその過ちを正す手段を知っていた為により多くの過ちを犯す事になるという
 典型的なダメ男くんだが、ゾンビとかの非日常を省けばこういった判断力が
 甘い”あさはか”な行為(これまた生々しい現実と照らし合わせると解りやすい、
 金銭関係とかね)というのは普通の若い男女の恋愛にもよくある事だ。
 しつこいようだが安っぽいドラマの口先だけの愛よりも、よほど愛が試される
 ところだけれど、こういった状況で賢く厳しい判断ができる人ってのは不思議と
 モテ無いんだよね。やっぱり障害があってこそ、それを克服するってテーマが
 出来るから恋愛も盛り上がっちゃうんだろうけど…納得がいかないと言えばいか
 ないよな。
 まあ”あさはか”なキャラクターがいないとドラマにもならないので、そんな
 ”あさはか”な若い男女のラブストーリーである本作。オンタイムの人は現実で
 ”あさはか”にならないように考えながら観て欲しいし、そうでない人は昔
 ”あさはか”だった頃を思い出して観て欲しい。
 余談だがこの作品のゾンビになってしまう彼女は、自分の飢えや痛みを抑えよ
 うと、その辺に落ちてるガラスや金属片の廃材で全身にボディピアスを施して
 いくのだが、このルックスが中々カッコ良くてホラー映画好きの間では名キャラ
 クターとして伝説となっているぞ。

この後、最近になって「バタリアン4」、「バタリアン5」と続けざまに続編が出て
い るが、内容的には特筆すべき所は無いので観なくてもよろしいかも。
今回はバカバカしい映画でも観ようによっては重厚なテーマが導き出せる事を
話したけど、次回はまた違ったテーマを導き出してる有名監督の出世作を紹介
しよう。
[金子一馬]
◆「女神転生」シリーズに登場するキャラクターや悪魔のデザインを手掛けており、「悪魔絵師(電脳悪魔絵師)」の別名を持つ。
「デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団」原案・アートディレクション
「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王」プロデューサー・キャラクターデザイン

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